Vol.8 プラセボのふしぎ
薬剤師のみわです。
テレビなどでたまに聞く「プラセボ」という言葉。皆様はご存知でしょうか?
プラセボとは?
プラセボ(placebo)とは、いわゆる偽薬のことです。
偽薬といっても、その見た目は薬のそれと全く同じものをしています。ですがそこには有効成分は入っておらず、勿論効果も無いものです。医薬品の有効性を判定するための比較対象として使われたり、医療現場でも実際に医療行為として使われることがあります。
信じる者は救われる―プラセボ効果
私もプラセボをお渡しする機会が何度かありました。例えば、どうしても眠れないと言うある高齢の女性。しかし睡眠薬連用が難しいという医師の判断で、プラセボの粉薬を調剤しました。「よく効く薬」とだけ聞いて服用したその方は、プラセボのはずなのにグッスリ眠れるようになったのですよね。「よく効いたよ、ありがとう」なんて言われて私の良心がチクリと痛みましたが…これも立派な医療行為なのです。
臨床で使われるプラセボは、体にそこまで影響がない乳糖やブドウ糖といったものを「薬」としてお渡しします。先述した睡眠薬や、安定剤・鎮痛薬など、薬を飲んでいる安心感で症状改善を見込めることがあるのです。このように、実際には効果がない偽薬なのに効果がでることを、その名の通り「プラセボ効果」といいます。
信じる者は救われない?
薬の効果を信じた結果アレレという話もあります。
武田薬品が40年以上販売していた消炎酵素製剤(痰切りを良くしたりする)ダーゼンという薬がありました。ですが2011年、効果がないと再評価され、結局自主回収・発売中止となりました。それまで数多くの病院・薬局で取り扱われていた薬であり、医療現場ではちょっとした話題になりました。
何故効果がないのに発売されたのか、というのには発売当時の医療技術の未熟さもあったと思います。が、何故こんなに長い間発売されていたのかという点は、メーカーも医者も薬剤師も患者も「(効果がないのに)効果がある気がする」プラセボ効果に支えられていたのだと思います。
プラセボは人間のふしぎ
ちょっとマイナスな話もしてしまいましたが、プラセボ効果により症状が改善するという実際を見ているため、わたしは「信じる」そして「安心する」ことで病気がより治ることがあるという可能性は素晴らしいと思います。人間のふしぎを感じます。
医療を提供する側も、医療を受ける側も、正しく判断した上で、信じていく必要があると思いますね。
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